小林賢太郎からのメッセージ

『THE SPOT』千秋楽!仙台公演

 『 THE SPOT 』仙台公演にご来場ありがとうございました。ずいぶんお待たせしてしまいましたね。ごめんなさい。一生懸命がんばりました。約束を果たせてよかったです。

 震災は全国ツアーのスタート3日目に起きました。東京の僕のいた所は震度5強。交通網は麻痺、公演は中止。日をおうごとに明らかになる東日本の甚大な被害。はっきりいって「舞台どころではない」という事態。僕にできることは主催の指示を待つことだけでした。
 発生から8日後の3月19日。予定されていた山口公演から上演が再開されることになりました。所属事務所のコントライブや知り合いの劇団など、舞台公演は全て自粛されていました。その中で僕のライブがの震災後最初の興行ということになり、なにかこう、責任を感じました。
 「まずは筋を通す」これが僕の仕事だと思いました。日本はこれから大きく復興しなくてはならない。健康で働ける僕たちが経済活動をストップさせてはもともこもない。そんな考えのもと、僕は舞台に立ちました。
 けれども、あの惨状を知った上で人を笑わせるという気持ちにはなかなかなれません。力づくで自分をねじ伏せ、本番に挑みました。本番が終わったら、葛藤するだけ葛藤して、疲れて、寝ました。
 でも、次第に分かってきたんです。その苦しさは正義感のようで実は無意味なものだと。だって、僕は何も失っていない。揺れたときちょっとは怖かったけど、命も、家も、ちゃんとある。自然の猛威にすべてを奪われた方の気持ちは、どんな想像力を使っても計り知ることはできません。それに、僕が気持ちを沈ませることは、被災者になんの足しにもならないのだから。
 そう思ってからの公演は、とにかく厳しくいきました。「もっと面白くするには、もっと楽しんでもらえるには」毎日毎日、疑って疑って、作品の完成度を上げることに全力を注ぎました。つまり、いつもどおりの僕です。そして『 THE SPOT 』は、自分でも納得いく作品へと成長していきました。

 震災直後の日本列島の12もの都市を旅するという経験は、僕に多くのことを教えてくれました。「大震災」という僕たちに投げかけられた問いに対して、こんなにも多くの視点や立場があるものだと知りました。人は考えの角度を決めつけてしまうことで、見失い、かたより、食い違いを生むものなのですね。
 コントもそうなんですけど、考えを決めつける事なく、自分をしっかり疑って、あらゆる違う角度から何度でも考え直すことが大事なんだと思います。そしてその中から、一番ハッピーなやつを選ぼうじゃありませんか。ネガティブな情報をコレクションするのは、もうやめましょう。
 あれから5ヶ月。確かな事は、僕はずっと笑い声を聞いていた、ということ。山口も、広島も、大阪も、新潟も、福岡も、静岡も、京都も、札幌も、横浜も、名古屋も、東京も、仙台も、みんな同じものを見て笑ってました。「繋がってる」って思いました。
 復興は始まったばかりです。全員で乗り越えてやりましょう。僕も、僕に出来ることをやり続けます。
 昨年『SPOT』として始まった『THE SPOT』全98公演、これにて終了。ポツネンさん、楽しかったね。お疲れさまでした。たまにはふたりでゆっくり呑もう。

小林賢太郎

各会場でご協力頂いた東日本大震災の義援金は、当公演主催でありますTBSラジオを通じ、JNN・JRN共同災害募金に送られます。ご協力ありがとうございました。

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