小林賢太郎より

二度目のパリ公演

 「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」パリ公演の千秋楽を無事に終えました。満員御礼。こんなにも大勢のフランス人が、なぜ僕のことを知っているのか、不思議でなりません。
 初日を終えたあと、劇場のロビーでパーティーがありました。これは、こちらの劇場では普通のことで「カクテル」と呼ばれるものです。日本語にするならば「初日乾杯」ってところでしょうか。参加者は、劇場の関係者、劇評を書くライターさん、こっちで活動されている同業者、なんか偉い人、など。いろんな人が入れ替わり立ち替わり、僕に感想を述べていく。フランス語のシャワーを浴びる中、僕が聞き取れた単語で一番多かったのは「Poétique/ポエティック」でした。「詩的」ということです。なるほど、悪い気しない。
 取材も受けました。いくつかの劇評もでました。そして、今後のお誘いをくれたところまでありました。この街に居場所がある、そう感じました。
 自分で描いた絵を次々と背景に投影し、パントマイムやマジックを織り交ぜながら、コントとも演劇ともつかないパフォーマンスをする。こんなデタラメなショーを、フランスは実にあっさりと受け入れてくれたのです。
 「コント公演」「演劇作品」。僕は普段、日本のエンターテインメントビジネスの仕組みに従って、作品の肩書きをいちおう名乗ります。これは商品として扱ってくれる人たちを困らせない為の礼儀だと考えています。
 しかし一方で「ジャンルへの執着は作品の爆発を妨げる」とも考えています。作り手としては「作品を良くする」ってことだけに固執していればいいのです。そんな僕に、フランスは優しかった。
 パリには多種多様なステージパフォーマンスが存在していて、それぞれがしっかり市民権を得ています。僕の作品も「ジャンルに属さない珍しさ」ではなく「質の高さ」で評価していただけたと感じました。泣きそうです。
 2年半ぶりのパリ公演。今回のお客様の中には、前回の公演を観て、また来てくれたという方も多くいらっしゃいました。皆さんの記憶があるうちに、またこっちで上演できたらいいなあ。

 滞在中の空き時間に、王立サーカス学校の卒業公演を観に行きました。とっても素敵でした。テントの前で配られていた地元のエンターテインメント情報誌を見たら、僕が出ててびっくりしました。

 いやー、ムッシュポツネン、お疲れさまでした。では次なる開催地、英国、ロンドンへ行ってまいります。

小林賢太郎

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