小林賢太郎より

質問をくれた方へ

 劇場に来てくれたお客様からのアンケート用紙や、お手紙などで、僕宛の質問をたくさんいただきました。
 演劇部員や劇団員など、舞台を目指す方からの質問があると、やっぱりなんとなくで答えるわけにはいきませんね。僕は現役の舞台人ですから。
 その他のかわいいやつも含め、頑張って10問にお答えしました。必要としている人に届きますように。
(※内容が重複しているものや、長文の質問は、内容が変わらない範囲でまとめさせて頂きました)

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Q;大人たるもの、どうあるべきでしょうか。
(23歳・男性・会社員・他)

A;最近あらためて「僕はまだまだ大人ではないな」と思いました。
 ないものをつくるということは、とても苦しくて消耗します。そんな弱ってるときに全く違う角度からのストレスが現れると、本当に逃げ出したくなります。そんなとき、大人としての本質が試されるんだと思います。
 僕にとっての目指したい「大人」は、前線から逃げ出さない強さと、人を許せる優しさを持った人。あと、ちょっとの鈍感さもほしいかな。みなさんはどう思いますか?

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Q;私は将来、美術系の大学に進学したいと思っています。高校生のうちにやっておいたほうがいいことはなんですか?
(16歳・女性・学生)

A;デッサンです。D・E・S・S・I・N、デッサン!。中でも石膏像ね。似てる似てないがわかりやすいから、正確にデッサンできているかどうかを判断しやすいですし。また参考作品が多い分、下手なら自分にちゃんとバレる。鍛えるのにもってこいのモチーフです。自分のデッサンを疑って疑って、デッサン力を1ミリでも上げてください。「絵が上手になる」ということは美大受験に役立ちますが、それ以上に「出来ないことが出来るようになる」という経験をすることは、その後の表現者としての人生に必ず役に立つと思います。

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Q;私はよく仕事でアイデアが思い浮かばず、しょっちゅう困ってしまいます。賢太郎さんは、どうやって抜け出していますか?
(42歳・女性・会社員・他)

A;アイデアは僕も浮かんできたりしませんよ。アイデアとは、神が授けるお告げではありません。必要な思考のプロセスを経て、自力で到達するものです。
 「アイデアを練る」とはよく言ったもので、粘土という素材を練って、器に形にして、焼いて、……。そんな必要な工程を経て茶碗が出来上がるように、アイデアを生み出すのにもプロセスがあるのです。「思いつく」というよりは「たどりつく」という感じです。

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Q;何をしている時が一番楽しいですか?
(16歳・女性・高校生)

A;コント。

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Q;しろい、ふわふわの、いぬを、かうとしたら、どうゆうなまえに、しますか?おしえてください。
(6歳・男性・小学一年生)

A;ライス。

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Q;好きなアイスの味はなんですか?
(19歳・女性・販売業)

A;バニラにエスプレッソかけたやつ。

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Q;私は劇作家の勉強中の身です。 小林さんはいくつかの作品を同時進行する時、机をかえると聞いたことがあります。私はもちろんアトリエもなく、机も一つです。そんな時、うまく切り替えるコツはありますでしょうか?
(29歳・女性・イタリアンのサービス)

A;僕がワンルームに住んでいた頃は、床に座って椅子を机にしてみたり、コーヒーショップをハシゴしたり、図書館に行ったり、うろうろやってました。
 こういうことも、自分で考えて解決することが、クリエイターとしての訓練。がんばってね!
 あ、今僕のアトリエには、僕の机が大小合わせて6個あります。ふぇっふぇっふぇ。

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Q;役者をやってみたいと思っているのですが、どうしても一歩を踏み出すことができません。どうしたらいいでしょうか。
(20歳・男性・学生・他)

A;こういう相談、わりとあります。まとめてお答えします。
 答えはひとつ。踏み出せないのなら、無理にやらなくていいと思います。星の数ほどいるライバルたちが「しめしめ、ひとり減ったぜ」と思うだけです。
 「いやいや賢太郎さん、そこまで本格的に目指したいわけではなくてですね」なんて思った方、相談する相手が間違っています。僕はプロの舞台人です。

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Q;大学で、舞台に関わるお仕事の勉強をしたいと考えています。なにか、学生のうちにしといたらイイっていうものはありますか? 舞台監督になりたいです。
(18歳・女性・高校生)

A;コミュニケーション能力を上げてください。伝える力と聞く力。礼儀と挨拶。
 現場ではとても高度なやりとりが要求されますので、最低限のことはその前にできておくといいと思います。
 ちなみに、僕の尊敬する舞台監督にこんな質問をしたことがあります。「裏方を学ぶところにもいろいろありますが、どこ出身のやつが一番使えますか?」と。すると、舞台監督は迷わず答えました。「1日でも早く現場に入ったやつ」だそうです。

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Q;劇団で座長をやっています。どんなに言ってもやる気がない役者がいます。どうすればいいですか? (22歳・男性・大学生・他)

A;こういう相談も、わりとあります。「役者によって熱量にバラつきがあり、欠席する人までいる……」とか「新入部員に自分勝手なやつが……」とか「何度注意しても遅刻する劇団員が……」など。

 おしなべて言うと、こうです「組織の中に困ったやつがいます。どうしたらいいですかね、賢太郎さん」。(おしなべてすいません)

 質問をくれた方々の共通点は、みなさん、リーダーだということ。お疲れさまです。
 カジャラの冠に「コントマンシップ」とあります。(ship;精神)
 さらに僕にはもう一つ、皆さんと同じ「リーダーシップ」という大事な仕事があります。リーダーを、もう20年近く仕事にしてきました。
 リーダーの仕事には、外部から見えるものと見えないものとあります。前線で指揮をとっている姿は、周りからも見えます。しかし何かトラブルがあれば、逆に見せないように、表に出ないようにしなければなりません。リーダーって先頭にいるけど、裏方なんです。
 でもね、世の中にはリーダーの努力を汲み取らず、存在を軽んじている人っているもんです。そういう人には、たいてい悪気があるわけじゃないんです。ただ、リーダーをやったことがないんです。自分のためにリーダーがなにかしてくれることを、うっかり当たり前だと思っているんです。

 ちょっと思い切ったアドバイスをします。
 あなたを悩ませる人にはいろいろなタイプがいると思いますが、ある程度しっかり向き合ったら、自分で限界を見極めて、いつかは心の距離をとってください。
 この考えを、冷たいと思う方もいるかと思います。「いやいや、それでも私は、相手が分かってくれるまで根気よく向き合うんだ!」って。それなら、その優しさで、やる気のない人と向き合い続けてください。かつての僕がそうでした。
 でもね、そうして立ち止まっている間にも、やる気のある演劇集団は、将来に向かってどんどん前進してますよ。

 相手の性格を直すだなんて、おこがましいことです。だって、あなたは座長であって、劇団員の親じゃない。それぞれ自立した大人が協力しあって、社会は成り立っているのです。歩こうとしない相手を無理やり歩かせようとすることは、あなたも一緒に立ち止まってしまうことになるんです。

 最後に。
 メンバーを褒めたり心配したりするのはリーダーの大事な仕事。でも、リーダーのことは誰も褒めてくれません。だから、僕でよければ、今ここで。

 「お疲れ様です!あなたはよくやった。ちゃんと人と向き合って、ゆずって、我慢して、改善につとめてる。でも、あなたが傷つきすぎてしまわないようにね。次のプロジェクトに支障が出てしまいますよ。だってあなたはリーダーなんだから。」

                                  小林賢太郎

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