小林賢太郎より

コントのワークショップをやりました。

 ワークショップ「観客を笑かす演技のための理論と技術」を開催しました。少ない定員数に、何倍もの応募をいただきました。急遽枠を増やしてなんとか対応したのですが、参加できなかったみなさん、ごめんなさい。
 3日間しかありませんでしたが、しっかり準備して、できるだけのことはやりました。
 僕が最初に舞台での笑いを書いたのは15歳。文化祭でのクラス演劇でした。それから高校演劇部でコントやって、大学のオチケンを経て、コントや演劇にプロとして取り組むようになりました。この30年の間に、あらゆる文献を読み漁りました。心理学としての笑い論や、お笑い入門みたいなものも。しかし、どれもピタッときませんでしたので、自分のコントの活動と擦り合わせながら、いちばん現実的にフィットする自分のための笑いの教科書をつくっていきました。今回は、それを重要な順に並べてお伝えした、という感じです。ちょっとだけ内容をご紹介しますと……

1日目「理論」
・顔と名前を出して仕事をするリスクと心構えについて
・コントの定義と領域について(社会的な役割についても)
・コントの経済(動員を数万人規模に育てるイメージ戦略と広告の機能)
・人はなぜ笑うのか(精神生理学から見る笑いのメカニズム)
・「フリ」と「オチ」の機能(観客に与える予備知識の扱い方について)
・「らしさの笑い」について

 みなさん、とても驚いていました。やはり「コントは面白い人がやるから面白いんだ」という誤解があるようですね。理論に裏打ちされているから、数万人規模の公演を安定的に上演できるんです。コントの経済の話では、実際の数字を出して説明しました。みんなに稼いで欲しいのですよ。コントで。

2日目「技術」
・演技のための運動神経について(止まり方、揃え方の練習)
・コントのためのパントマイム(辻褄を合わせる練習)
・シリアスな演技のまま芝居をコント化する練習(呼吸や視線の表現力)
・ゲストのコントアクターを交えての座談会(稽古場や舞台裏の話など)

 呼吸や視線だけでできることのバリエーションに、みなさん感心してくれたようです。セリフの工夫より、もっと手前にある無言でできることがたくさんあること。味覚が子供から大人になるにつれ成長するように、面白さにも感受性の段階があります。「おどけない」「誇張しない」ということの意味。ゲストに辻本耕志と南大介を迎え、お手本を交えて一緒に技術を学びました。

3日目「訓練」
・自分で判断する力と速さを養うトレーニング(エチュードコント20タイトル+5本)

 3日目のエチュード(即興)コント、笑わせてもらいました。負担がワードセンスに偏らないように、面白く膨らむであろうタイトルを20種類用意。メンバーはそのつどくじ引きで決め、与えられる打ち合わせ時間はわずか30秒。瞬発的に関係性を描く力などが試されました。呼吸や間の笑いがフッと入ってくると「理論」と「技術」のレクチャーの成果を感じたりもしました。

 3日間、詰め込めるだけ詰め込んだので、みなさんお腹いっぱいだったと思います。お伝えしたいスキルはもっともっとあるのですが、それにはもう、公演に参加してもらうしかない。僕がキャスティングするとき、どうやって役者を選んでいるかという話をしたときの、彼らのムラムラした目を忘れません。みんなやりたいんですね、コントを。そりゃそうでしょ。手品のタネ知って、練習したら、誰だって人に見せたくなりますって。コントの種明かし、うまくいったと思います。しめしめ。
 これまでも大学や地方の文化事業などで教鞭をとってきましたが、その度に僕も勉強になっています。お役に立てる場面があれば、またいつか。

小林賢太郎

上へ
前へ